第74回ベルリン国際映画祭が、現地時間の2月15日に開幕した。
現在のイスラエル軍によるガザ紛争に、映画祭が具体的なコメントをしないことに対して、開幕前から一部で非難の声が上がり、映画祭参加をボイコットする作品なども出ていたことが注目を浴びていたなか、ディレクターのカルロ・シャトリアンとマリエッテ・リッセンベーグは1月半ばに、「(前略)中東あるいは世界の人道危機による被害者に対して同情を表明します。(中略)またドイツに広がる反ユダヤ主義、反イスラム主義あるいはヘイトスピーチの風潮を重大に捉え、ベルリン国際映画祭は文化的な組織として、いかなる差別にも断固たる反対を表明します」というステートメントを発表。さらに右翼政党の政治家を開幕式に招待しないことを告知した。
だがそれでも、ガザ休戦を求める具体的な表明を出すべきだという声が、スタッフ内部からも上がっているという。またオープニング・セレモニーのレッドカーペットでは、映画人や業界関係者約50人により、「民主主義を支持する」というメッセージを掲げたデモンストレーションが行われた。
審査員メンバーの会見でも政治的な質問が飛び出し、審査員長を務めるルピタ・ニョンゴは、「わたしはここでは外国人なので、ドイツの政治的な風潮はわからない。それをコメントする立場にないことを幸いに思う」と発言。その一方で、「自分がここにいることも含めて、すべては政治的なこと。アーティストがいかに今の世界に対して反応しているかを(作品を通して)観たいと思う」と答えた。
今年の審査員メンバーは他に、ジャスミン・トリンカ、クリスティアン・ペッツォルト監督、ブラディ・コルベット監督、アルベルト・セラ監督、プロデューサーのアン・ヒュイ、ウクライナの作家、オクサーナ・ザブジュコから構成され、全体的に監督色が濃い印象だ。
コンペティションは20本から成り、オリビエ・アサイヤス、アンドレアス・ドレーゼン、ピエロ・メッシーナ、ブリュノ・デュモン、ホン・サンス、アブデラマン・シサコなど、作家主義系の監督が目立つ。
オープニング作品はキリアン・マーフィが主演、プロデュースを務め、クレア・キーガンの小説をティム・ミランツが映画化した「Small Things Like These」。アイルランドで実際に起きた修道院での虐待を、張り詰めたテンションのなかで描く。ベルリンにはミランツ監督、マーフィら出演者の他、共同プロデューサーのマット・デイモンも参加し、大きな注目を集めた。
10日間にわたり開催される映画祭は、今後も政治的な緊張をもたらしそうだ。(佐藤久理子)

(出典 news.nicovideo.jp)
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